令和元年「すくも森林塾」2019年10月23日~27日 宿毛市
宿毛市の取組:宿毛森林塾
写真提供:一般社団法人宿毛市観光協会
宿毛市について
宿毛市は四国の西南に位置し、温暖な気候と海、山、川の豊かな自然に囲まれた地域です。
特に豊後水道に面した宿毛湾は、魚のゆりかご、天然の養殖場といわれるほど魚種の豊富な海となっており、全国の釣り人の憧れの地となっています。
そして、宿毛市から定期船で行くことができる沖の島の海は透明度が高く、珊瑚や熱帯魚が豊富に見られ、全国有数のダイビングスポットとなっています。
このような豊富な海の印象がある宿毛市ですが、森林率は84%を占めており、森林資源も豊富な地域となっています。この豊かな森林を活用していく担い手を育成していくために宿毛市では「すくも森林塾」を創設し活動しています。
今回はそんなすくも森林塾の取り組みについて宿毛市に伺いました。
宿毛市民と地域おこし協力隊員が実践する自伐型林業
写真:下段中央がアドバイザーの橋本光治さん、研修生の市民の方々、地域おこし協力隊員、地元中学生(職業体験)
- 支援制度:「すくも森林塾」
- 実施日 :令和元年10月23日~27日
- 場 所 :宿毛市
- 利用者 :宿毛市民
- アドバイザー略歴
橋本 光治 : 徳島県の橋本林業 代表
専業自伐林業者として、38年間林業に従事
伐倒・搬出・枝打ち等林業全般に取り組む。
紹介記事
http://jibatsukyo.com/person/hashimotofamily
宿毛市では市内の木質バイオマス発電所の活用、森林の利活用を目的とし地元住民を対象に、チェーンソー研修や間伐の基礎、林業に必要な建設機械研修など、自伐型林業に必要な基礎技術を身につける研修「すくも森林塾」を行っている。
参加者は主に山林を所有している地元の住民を対象とし、宿毛市、地域おこし協力隊員が参加者をサポートしている。
学びで変える自分の山
令和元年10月23日~27日に行われた作業道開設の研修(アドバイザー:橋本 光治さん)には、一期生の参加も多く見られ継続的に「林業を学ぶ」姿勢が根付いている様子がうかがえた。
参加者は「元消防士」「農家」「公務員」、所有林の有無にかかわらず、様々なバックボーンをもった方が各々の理由で自主的に参加し、自由闊達に林業を学んでいる。
参加の理由は様々
清家さん:農家 初参加
「ユンボ、チェーンソーの勉強のために参加した。
段々畑の道をちゃんとできると楽だと思って
普段は文旦の栽培 収穫以外は雑木を切ったり、米と蜂蜜も作っている。
作業道の勉強は応用がきく、参加してみて勉強になって凄く楽しい。」
井上さん:事務職 初参加
「山はあるが今は手入れしていない。
薪ストーブを入れたので、チェーンソーのあつかいとかを覚えるために参加した。」
元受講生もお手伝い、学び直しに参加
森田さん:元消防士 森林塾一期生
「たまに自分で間伐している、森林塾に参加するまでは独学でやっていた。
自伐型林業の基礎から学べる、最初はユンボの操作は怖かった、歳をとって作業道を開設するのは大変だと思っていたが習っといて損は無い。
今回の森林塾は一回の開催日数が長く集中して学ぶ事ができる。
山を壊さずに道をつけているのは凄いことだと思う。林業は一人ででき、時間にもとらわれず自由に出来ることがいいところ。」
中田さん:公務員 森林塾一期生
「今回で2回目の参加、以前やってはいけないことをやって怪我をした。
森林塾では「何すると危険なのか?」、安全に施業するための手法を教えてくれる。
大きな山を所有できれば、道をつけてみたいと思ったが年齢的に難しいなと思っている。」
江口さん:森林塾一期生
「森林塾を受けるまでは、林業はそれほどでもなかった。
今は農家もやっているが、これからは林業だけにしたい、
道をつけることで山が変わる。」
移住から定住へ、地域おこし協力隊の林業と施業地確保の課題
宿毛市では林業振興(自伐型林業)を目的とした地域おこし協力隊員の募集・採用を継続的に行っている。
林業経験者、未経験者を問わず、森林塾への参加を中心に自伐型林業を学び、宿毛市での林業振興のあり方を各々の隊員が、様々なやり方で形にしようと努力を重ねている。
経験者・未経験者それぞれのやり方で林業に従事
山田さん:岐阜県出身 林業経験者
「事業体での労務災害をきっかけに、林業労働の構造的課題や働き方に疑問を持った。西日本各地の幾つかの事業体や林業系協力隊を見て回り、宿毛市の風土と小規模林業の取り組みが課題解決の糸口になると感じ移住を決めた。」
西川さん:徳島県出身 未経験
「4、5年前 四万十市で自伐型林業の体験ツアーに参加した事がある。
その時に、自分のペースでできそう、無理せずできそうというイメージがあった。
四万十市の自伐林家の方から地域おこし協力隊員募集の連絡があり応募した。
宿毛は住みやすく人柄もいいと感じる。」
久保田さん:東京都出身 未経験
「これまで介護職や声優、好きだと思うことをやってきたが、次は自然のそばで住みたいと考えていた。
家族から地域おこし協力隊の話を聞き、調べてみると高知県の話しが多く、その中でも林業を選んだのは直感。
いろいろな話を聞くが、実際にやってみて林業は仕事として有りだと思う。
施業地確保の課題もあり、自伐型林業で今後もずっとやっていくかは考えてみたい。
今は色々なスキルを身につけて、林業をメインにいろんな事を試していきたい。」
移住者が林業を続けていくためには、施業地確保、林地集約が大きな課題
斉藤さん:東京都出身 未経験
「東京の大学を中退して、地域おこし協力隊に着任。
移住を考えていた所、「地域おこし協力隊」と「自伐型林業」に興味を持ちどちらも叶えられる宿毛市を選んだ。
高知県は移住者情報が多く、自伐型林業に関しても先進的な活動をしていると感じた。
実際に活動してみると、関わった宿毛の山主さんは自分たちを応援してくれる人もおり地域と一体になって活動出来ている実感がある。」
- 施業地の集約に取り組む
「活動を通して感じる課題は施業地の集約作業。
山林の境界が不明なことが多く、施業の前準備に時間がかかってしまうことも少なくない。
新たな法律に伴う森林経営管理制度の活用や環境を重視した山作り等、これからも課題解決に向けて市と協力して活動して行きたい。]
吉田さん:東京都出身 未経験
「自伐型林業をキーワードに林業が変わり始めてると感じた。
前職はIT、全然違う事をやりたかった。
宿毛市は森林率の高いところ、地域おこし協力隊で林業となると、佐川町か宿毛市の2つが候補になる。
自伐型林業の普及に関しては、まだまだこれからの宿毛市をあえて選んだが、まだまだ課題が山積みなのは予想通りだと感じている。
行政としても地域おこし協力隊が林業をどう宿毛市で続けていくのかまだ答えを模索している最中だと感じる。
地域おこし協力隊員が林業で生活をする、そのプロセス、答えがないところを手探りで進めるのは思ってた以上に時間がかかる。
憧れをもって林業に来た、深掘りがいもある、著名な方からも教えてもらえる、一流から学べる環境がここにはある。
- 今だからこそチャンスもある
「今後は林業メインでやっていくつもり、行政ができていない分チャンスもあり、可能性があると思う、これから施業地を確保して、個人事業として経営を成り立たせるところまでやりきりたい。」
行政主導で進める林地集約
宿毛市も林地集約、施業地の確保は大きな課題だと捉えている。
「地域おこし協力隊の存在は大きいしありがたい。
県内では佐川町が林地集約、施業地の確保について実績をあげている。
地域おこし協力隊員が宿毛市で継続して林業実践を継続してできるよう、佐川町の事例も参考に早い段階で形にしていきたい」