第1回 森林づくり体験ツアー(梼原町)
次世代へより良い環境を引き継ぐ社会 ~豊かで持続可能な森林づくり~
今回は梼原町が梼原森林づくり大学構想の一環として、林業・田舎暮らしに興味のある方を対象に行った、地元林業家との交流や、現場作業等を実体験する「第1回 森林づくり体験ツアー(梼原町)」をご紹介致します。
雲の上の町 ゆすはら
愛媛県との県境、高知県の北西部にある梼原町は、高知市内から車で約2時間。日本3大カルストに数えられ標高1455mにもなる四国カルストの麓に位置し、町面積の91%を森林が占める自然豊かな山間の小さな町です。
町内には新国立競技場を手がけたことで知られる建築家 隈研吾氏が設計した「雲の上の図書館」「梼原町総合庁舎」や「雲の上のギャラリー」等多くの建築物があり、自然と調和した隈研吾建築を生活の中で楽しむことができます。
また、全国に先駆けて自然エネルギー(風力・地熱・太陽光・木質ペレットなど)の利用に町をあげて取り組んでおり、2009年には国から「環境モデル都市」の認定を受けています。そして梼原町森林組合では、間伐材を活用した木質バイオマスの地域循環利用の取り組みが評価され、国際的な審査機関である森林管理協議会(FSC:本部ドイツ)が環境に配慮した適切な森林管理を進める森林を認証する、FSC森林認証制度の認証を団体としては国内で初めて取得しています。
気候
- 年平均気温:13.4℃
- 最高気温:36.0℃
- 最低気温:-10.2℃
- 年間降水量:2,630mm
- 積雪:中央部0.3m~0.6m、北部山岳地域1.0m~1.5m
梼原町の森林の状況
種類 | 面積(ha) |
スギ | 7,101 |
ひのき | 5,135 |
松・椚 | 1,062 |
天然林 | 4,799 |
合計 | 18,097 |
※H29現在 |
第1回 森林づくり体験ツアー(梼原町)
今回の参加者は関東、中京、関西から集まった6名、広告代理店の営業さん、祖父の山で林業をやっている方、引退後の暮らしを真剣に考えている方等、現在の暮らしがありながらも、皆一様に梼原への移住・田舎暮らしと林業を生業とする生活に興味をもって応募してきたと口々に話す。
日 時:令和3年10月15日(金)~17日(日)
参加人数:6名
スケジュール:
10月15日(金)
12:30 高知駅北口集合~(移動)~14:30 梼原町役場 オリエンテーション
~15:15~(移動)~15:30 木質ペレット工場(ゆすはらペレット(株))・
製材所見学(梼原町森林組合 森林価値創造工場)~17:00~(移動)~
17:15 宿泊所着~18:00 夕食
10月16日(土)
9:00 梼原町役場~(移動)~9:30 植樹体験~(移動)~12:00 昼食(農家レストラン くさぶき)~(移動)~
13:30 伐倒現場見学~14:30~(移動)~15:00 チェーンソー体験~16:30~(移動)~17:00 宿泊所着~18:00 夕食
10月17日(日)
9:00 木造施設見学(役場→図書館→マルシェ)~10:30~(移動)~12:30 高知駅着、解散
1日目:オリエンテーション、ペレット工場・製材所見学
1日目は高知市高知駅に各自で集合し、そこから約2時間で梼原町役場に到着、オリエンテーションでは、梼原町 森林の文化創造推進課 立道 斉 課長より、町の紹介と地域おこし協力隊制度を活用したReMORI構想、梼原森林づくり大学構想について説明を受けました。
オリエンテーション
製材所・木質ペレット工場見学
その後、梼原町役場からほど近い、梼原町森林組合が運営する製材所と、第三セクターゆすはらペレット株式会社が運営する木質ペレット工場を見学しました。
講師:梼原町森林組合 田尾 欣三 加工課長
講師:梼原町森林組合 中越 信也 総括部長
2日目:植樹体験、伐倒現場体験、チェーンソー体験
2日目は植樹体験からスタート、講師に梼原町地域林政アドバイザー松山さんをむかえ、皆伐後の斜面に広葉樹(ホオノキ、トチノキ)を各25本植樹しました。
急斜面には整備された林道はもちろん無く、朝からハードな山登りでしたが、参加者は松山さんや地域おこし協力隊の先輩の手を借りながら、「登ってくるのは大変だったけど、梼原の森林を創るお手伝いができて嬉しいです。」と、これからの梼原の森林を創る木々をしっかりと植樹していました。
植樹体験
(右)講師:松山 榮喜さん
伐倒現場見学ー川上木材ー
農家レストラン くさぶきで昼食に舌鼓を打った後は、地域おこし協力隊の受け入れ先でもある、川上木材さんの施業地で実際に伐倒から架線を使った集材まで、林業の現場を見学しました。
講師:川上木材 川上 政志さん、川上 周一さん
政志さんは梼原町の林業若手メンバーの研究会「CoMORI」の副代表でもあります。
政志さん:「人も減ってきて、若い人にも魅力のないものと思われてると思うけど、
誰かが手入れしないといけない、循環を作ることも大事、やりがいはあると思う。」
周一さん:「技術のいる仕事、上手くやればお金になる。
減価償却を考えながら、お金も借りながら、事業計画をしっかりと立てながらやらないといけない。機械を買ったらそれを休まさず、仕事を回転良く回さないといけない。
仕事を休めんがが悩みやけんど(笑)、やったらやったばあ身になるき面白い!」
はじめてのチェーンソー体験
体験ツアーラストを締めくくるのは講師に谷田 真吾さんを迎え「はじめてのチェンソー体験」。
ヘルメット、グローブ、チャップスを身に着け本格的なチェンソーによる玉切りを行いました。
最初はおっかなびっくりだった参加者でしたが、2回、3回と繰り返すうちにコツを掴み全員が初めてとは思えないチェーンソー捌きを見せていました。
少し興奮気味に「爽快感があった、バッテリーとエンジンでは全然違う!
小さい木はきったことがあったが大きいのは初めて
欲を言えば立ってる木を伐って倒したかった。」と語る参加者。
講師:谷田 真吾さん
繋げていく「ゆすはらの森林」
体験ツアーを終え参加者は気色ばみながら熱がこもった様子でこう語る。
「親と祖母が梼原の出身、コロナ禍と子供が生まれた事をきっかけに、田舎への移住・林業を真剣に考えている。もっと梼原のこと、林業のことを知りたい。」
「山で仕事してる人は荒っぽいイメージだったが優しい、ざっくばらんで川上のおじいちゃんは一緒にお酒を飲んだら楽しそう!
あんなご高齢で元気にやっている、自分も頑張れる自信になった。」
「高知の人は皆さん優しい、こんな歓待を受けて本当に嬉しい。」
役場が見据える今ある課題と移住から定住への取り組み
なぜ今のタイミングなのか?
立道 課長「梼原町でも林業技術者の高齢化は大きな課題、後継者がいなくなることがみえている、また山主の高齢化もあり恩恵を受けてもらう最後のタイミングに来ている。
梼原が梼原らしい姿を守り、豊かで持続可能な森林づくりを続けていくには、次の山の担い手を育てる事が急務。
梼原に移住してほしい
林業をきっかけに梼原に定住してくれればと本当に期待している。
地域おこし協力隊の制度を活用したのは、わかりやすく、来る方にも安心感があり理解が得られやすいから。
ReMORIを中心とした移住・定住、林業人材の育成は始まったばかり、梼原の森のこれからの100年を守る後継者、移住者を梼原町では広く受け入れていきます。」