もりとみず基金 林業人材育成研修「作業プランニング研修」


今回は、「もりとみず基金」が開催しました林業人材育成研修をご紹介します。

 

一般社団法人「もりとみず基金」について

「もりとみず基金」は土佐町、本山町と香川県高松市の3自治体の共同出資により、令和6年1月に設立されました。
同基金では、早明浦ダムが位置する嶺北地域と、早明浦ダムを利用する高松市が連携し、持続可能な森林経営と森林の多面的機能を最大限に発揮できる仕組みづくりの実現を目指しており、以下のような役割を実践しています。

 

地域循環共⽣圏の創出

  • ⾼知県嶺北地域(⽔源域)と⾹川県⾼松市(利⽔域)の強みを活かし、環境と経済の好循環を⽣み出す持続可能な地域づくりを推進

森林の多⾯的機能の最⼤化

  • ⽔源涵養、炭素吸収、⽣物多様性保全など、森林の多様な機能を科学的に評価し、従来の林業振興に留まらず、森林の価値を最⼤限に引き出す取り組みの実践

資⾦循環の仕組み構築

  • ソーシャルインパクトボンド(SIB)やクラウドファンディングなど、新しい形の投資や寄付の仕組みを通じて、環境保全と持続可能な地域づくりのための資⾦循環の構築

⼈材育成と交流促進

  • 森林管理のプロフェッショナルから都市住⺠まで、幅広い層を対象とした教育プログラムや交流イベントを実施し、森と⽔の未来を担う⼈材の育成

政策提⾔と情報発信

  • ⽔源域と利⽔域の持続可能な発展に向けた研究成果の発表や提⾔を⾏うとともに、森と⽔の⼤切さを社会に広く発信

 

今回の研修は、こうした事業のひとつである人材育成研修事業の一貫として実施されました。


作業プランニング研修

今回の作業プランニング研修は愛媛県指導林家の菊池俊一郎さんを講師に招き開催されました。
菊池さんは、愛媛県西予市でみかん農家と所有山林での林業を行う自伐林家です。今回の研修では少ない面積でしっかり利益を出していくために追求してきた森林経営の考え方について、教えていただきました。

 

研修の目的

嶺北地域の林業人材の林業技術向上に加えて、森林経営ができる高度な林業人材の育成

 

講座の位置づけ

高知県林業大学校で実施されている短期過程、リカレントコースにはない内容の講座を開講することで、幅広い知見や技術を身に付けた林業技術者を育成する。
 

開催日

研修内容

10月9日

●山林の見積り、森を見る目を養う
・10m×10mの標準地調査から対象林地内に存在する材積を概算
・出材量を試算
・作業必要量と利益率を試算

10月10日

●効率的な作業のプランニング、木取りの見極め
・1日目の試算を元に、地形や路網配置、所有機械も考慮して、最も効率的な作業をプランニング
・具体的に1本伐倒し、実際の材積を計測
・木材価格表を見ながら、最適な木取り(造材)について解説

10月11日

●現場に応じた作業プランニング
・2日目とは異なる現場で、0から作業プランを検討
・ひとつの対象地を複数のエリアに区切って、それぞれで作業システムを解説
・キャッシュフローも見越した作業の段取りを具体的に検討

10月12日

●住宅近くの山林のプランニング
・山地災害の危険度の高い山林について、山地保全も考慮した作業内容の解説
・間伐遅れ林の見立てと林況改善について解説

 


研修風景1 研修風景2

研修風景3


菊池さんは、今の林業従事者は作業プランニングの見積りが甘いことを指摘されていました。コストに見合う生産性が確保できる場所を選択することが収益性を向上させ、ひいては安全性の確保につながることを教えていただきました。
また、森林の整備は何世代にも渡る長期的なものであり、プランニングに基づき適切な伐採を行うことが持続可能な森林管理につながっていることも学ぶことができました。

 


研修風景4 研修風景5 研修風景6




地域林業を支える多様な取り組みについて、もりとみず基金の立川さんにお話を伺いました。

 

 

Q: もりとみず基金では、どのような活動を行っていますか?

 

私たち、もりとみず基金は、「都市と地域をつなぐ」ことをミッションのひとつに掲げています。特に、都市部の人々に森の重要性を伝え、地域の活性化につなげることを目指しています。たとえば、林業の研修プログラムを開催したり、地域おこし協力隊と連携して林業を始めたい方々を支援したりしています。
また、データや研究結果をもとに、森の整備がどのように水資源の安定供給に寄与するのかを可視化する取り組みも進めています。このように、実践と研究の両面から地域と都市をつなぐ活動を展開しています。

 


 

Q: 研修プログラムではどのようなことを学べるのでしょうか?

 

私たちの研修では、地域林業者や地域おこし協力隊の方々を対象に、林業に必要なスキルや知識を体系的に学べるよう工夫しています。特に、「作業プランニング」の研修では、林業の収益性を見極める力や、事業計画を立てる力を養うことを目的としています。

たとえば、「この山は収益性があるのか?」「どのように収益化を進めるべきか?」といった現場の課題に直結する知識やスキルを磨きます。ただ木を切るだけではなく、経営的な視点を持つことが重要です。

 


 

Q: 小規模林業のあり方についてはどのように考えていますか?

 

地域によって林業の形態は異なりますが、高知県では小規模林業が地域に根付いているケースが多いです。地域によっては森林組合と連携したり、副業的に林業を行ったりするスタイルもあります。土佐町や本山町でも、林業振興活動で地域おこし協力隊になった人たちの卒業後の定着率も高く、何らかの形で林業に携わっています。多様性を尊重しながら、小規模林業を実践できる方々を育てていきたいと考えています。

 


 

Q: 都市部の人々に森の重要性を伝えるための取り組みについて教えてください。

 

森と都市をつなぐためには、都市部の人々に森の役割を知っていただくことが不可欠です。高松市などの都市では、渇水の歴史があり、今でもダムの貯水率を日常的に意識する文化があります。この背景を活かして、森の整備が水資源の安定供給にどう関わるのかを伝える機会を増やしたいと考えています。

また、現地での体験プログラムや、地域の方々との交流を通じて、森の重要性を実感してもらうことも大切です。地道な活動ではありますが、これらの取り組みを続けていきたいと思います。

 


 

Q: 環境保全に関心のある企業との連携についてはどうでしょうか?

 

最近では、企業も環境面での貢献を求められることが増えています。特に、脱炭素や生物多様性の保全といったテーマへの関心が高まっています。その中で、もりとみず基金としても企業と連携し、環境保全活動を広げる取り組みを進めていきたいと考えています。

例えば、企業がCSR活動の一環として森の整備を支援する形や、森林クレジットの活用といった方法があります。企業のニーズを伺いながら、地域と企業がともにメリットを享受できる仕組みを構築していきたいです。

 


 

Q: 今後の目標を教えてください。

 

まだまだ活動は始まったばかりですが、「森と水をつなぐ」というシンプルなコンセプトを軸に、多くの方々に私たちの活動を知っていただきたいと思っています。そのために、ホームページや広報活動を通じて情報発信を強化し、地域の魅力や可能性を広く伝えていきます。

また、研修プログラムや地域おこし協力隊の支援をさらに充実させることで、地域と都市、そして企業をつなぐ新しいモデルを構築するとともに、それが山や林業者に還元できるような仕組みも同時に作っていきたいです。

 


 

「地域の林業を支え、都市とのつながりを強化することで、日本の持続可能な未来に貢献したい」。立川さんの熱い思いが伝わるインタビューでした。もりとみず基金のさらなる発展に期待が高まります。



詳細については、一般財団法人もりとみず基金の公式サイトをご覧ください。


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